公立大学法人大阪市立大学
Facebook Twitter Instagram YouTube
パーソナルツール
新着情報

プラズマ照射で骨再生を促進 骨折治癒期間の短縮や難治性骨折の効率的な治療の実現に期待

2021年10月18日掲載

研究・産学

                                                                    プレスリリースはこちらから
この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆10/22 Yahoo!ニュース、マイナビニュース、Science Portal

本研究のポイント

◇ウサギ尺骨欠損モデルで骨欠損部位に低温大気圧のプラズマ照射をした群では、しない群に比べて新生骨が増加。
◇医学研究科及び工学研究科で行った医工連携プロジェクト。
◇手術中に使用できる骨再生を促進する医療機器や、骨折治癒期間の短縮や難治性骨折、巨大骨欠損の効率的な治療の実現に貢献。

概要

 大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科学の嶋谷 彰芳(しまたに あきよし)大学院生、豊田 宏光(とよだ ひろみつ)准教授、中村 博亮(なかむら ひろあき)教授、同大学院工学研究科 医工・生命工学教育研究センターの呉 準席(お じゅんそく)教授らの共同研究グループは、骨欠損部位に照射可能なペンシルタイプの「低温大気圧プラズマ照射装置」を共同で開発し、患部へプラズマ照射することにより骨再生が促進することを明らかにしました。
 本研究成果は、医療分野において骨折治癒期間の短縮や難治性骨折、巨大骨欠損の確実かつ効率的な治療の実現に貢献することが期待できます。
 近年、プラズマ発生に関する理論・技術の革新に伴い、幅広い分野でプラズマ照射が応用されるようになり、特に生体組織に直接プラズマを照射することにより皮膚疾患の治癒・再生が促進される現象が報告されるなど、革新的医療技術としての期待が高まってきています。本研究グループはこの現象を骨折部の治癒促進に応用することで骨再生の促進や骨癒合期間の短縮が可能ではないかと考えました。
 今回、本研究グループは、ウサギで尺骨欠損モデルを用い、骨欠損部へ低温大気圧プラズマ照射をした群としない群で新生骨の再生に違いが出るかどうか比較しました。その結果、プラズマ照射時間を5分、10分、15分と変えたプラズマ照射群では、どれも新生骨の再生が確認されました。また、10分照射した群で、コントロールのプラズマを含まないガスを照射した群に比べて8週間後に最も新生骨量が多くなる結果が得られました。
 本研究は、2021年10月11日(月)に『PLOS ONE』(IF= 3.24)にオンライン掲載されました。

今回用いたペンシルタイプの低温大気圧プラズマ発生装置


骨欠損部へ低温大気圧プラズマの照射をしない群(左)と10分間照射した群(右)の新生骨

研究者からのコメント


豊田 宏光准教授

 今後も研究を重ね、骨折治癒や骨形成能を促進する新たな医療機器の創出に関わっていきたいと思っています。


嶋谷 彰芳大学院生


呉 準席教授

掲載誌情報

雑誌名:

PLOS ONE(IF= 3.24)

論文名:

In vivo study on the healing of bone defect treated with non-thermal atmospheric pressure gas discharge plasma

著者:

Akiyoshi Shimatani, Hiromitsu Toyoda, Kumi Orita, Yoshihiro Hirakawa,

Kodai Aoki, Jun-Seok Oh, Tatsuru Shirafuji, and Hiroaki Nakamura

掲載URL:

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0255861

資金・特許等について

 本研究は、科研費(低温大気圧プラズマを用いた骨再生促進技術の開発と整形外科領域への展開[課題番号 : 19K03811]の対象研究です。
なお、この研究で開発された骨再生促進方法および装置に関する技術は特許出願されています(特願2020-139761)。