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末梢のアミロイドβ(Aβ)の生理作用を解明~血液Aβをアルツハイマー病の診断マーカーとして使う際の注意を喚起~

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本研究のポイント

◇アルツハイマー病(AD)はAβが脳内に蓄積することが原因で起こるが、Aβは血液中でも検出される。
◇食事後に上昇する血液Aβは脳ではなく、グルコースやインスリンに感受性のある末梢組織(膵臓、脂肪組織、骨格筋、肝臓など)から分泌されていることが明らかに。
◇血液AβをADの診断マーカーとして使う際の注意を喚起するとともに、2型糖尿病がAD発症の強力なリスク因子となる機序を示唆した。

概要

 大阪市立大学大学院医学研究科認知症病態学の富山 貴美(とみやま たかみ)研究教授らの研究グループは、大阪大学大学院医学研究科臨床遺伝子治療学と共同で、血液中で検出されるアミロイドβ(Aβ)はグルコースやインスリンに感受性のある末梢組織(膵臓、脂肪組織、骨格筋、肝臓など)から分泌されていることを明らかにしました。また、末梢組織で分泌されたAβは膵臓のβ細胞に作用してインスリン分泌を抑える調節因子として働いていることも明らかにしました。本研究結果は、血液Aβレベルが食事によって大きく変動することを示しており、アルツハイマー病(AD)の診断マーカーとして使う際には、空腹時に採血するなど特別の注意が必要であることを示しています。

 ADはAβが脳内に蓄積することが原因で起こります。Aβは主に脳で産生されますが、血液中でも検出され、脳内のアミロイド病理を反映しているのではないかとの考えから、ADマーカーとしての研究が進められています。しかし、Aβの前駆体APPやAβ産生酵素は脳に限らず多くの末梢組織で発現しており、血液中のAβの由来については解明されていませんでした。また、ヒトやマウスにグルコースやインスリンを投与すると、血液中のAβが一過性に上昇することが報告されていますが、その理由も明らかではありませんでした。

 そこで本研究グループは、マウスを使用して末梢Aβの産生組織と末梢での生理作用を観察しました。その結果、末梢のAβはグルコース刺激により膵臓のβ細胞からインスリンとともに分泌され、インスリン刺激により脂肪組織、骨格筋、肝臓からそれぞれのオルガノカインとともに分泌されることが明らかになりました。また、分泌されたAβは膵臓のβ細胞に作用し、インスリンの分泌を抑制することにより、血糖の調節に寄与していることも明らかになりました。

 本研究成果は、2022年3月15日(火)午前5時(日本時間)に『PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences)』(IF = 11.205)にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント


富山 貴美研究教授教

 今回の研究は、2010年秋に着想して以来、途中中断していた時期はありましたが、10年以上かけてようやく論文発表にまでこぎつけました。アカデミックな発見にとどまらず、アルツハイマー病の診断にも影響を与える内容となっています。

 

掲載誌情報

雑誌名:

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

論文名:

Peripheral Aβ acts as a negative modulator of insulin secretion

著者:

Keiko Shigemori, Sachiko Nomura, Tomohiro Umeda, Shuko Takeda, Takami Tomiyama

資金・特許等について

 本研究は、公益財団法人 大阪認知症研究会からの医学研究助成を受けて行われました。