公立大学法人大阪市立大学
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研究・産学官連携

リスクコミュニケーションによるレジリエントコミュニティ創出拠点の形成

研究成果の概要

災害シナリオデータの集積と仮想台風シナリオ構築:
2020年度は引き続き気象庁の高解像度降水ナウキャスト,降水15時間予報値などの全国データを取得した.また,台風経路予報やの不確実性の評価などを行った.これらをもとに多様な仮想台風シナリオを構築した.

仮想災害対応ゲーム(VDRゲーム)の構築:
VDRゲームは,能動的災害経験獲得ゲームであって,プレイヤーがVDRゲームに何度も取り組むことが重要で,このような観点から,2020年度は提供データの多様性の構築,プレイヤーの多様性を考慮したシナリオのゲーム内での分岐,反復してVDRゲームに取り組む意識を養成するスコア化と学習履歴の保存・閲覧機能の付加を行い,プラットフォームをWEB上に展開した.

災害状況変化に関わる認識のアンケート調査の分析:
2020年度末に目標回答数600人(大阪市:200人,神戸市:200人,姫路市:200人)のWEBアンケートを実施している.このアンケートの分析を,2018年大阪北部地震発生時の対応,2018年台風第21号襲来時の対応,災害対策,台風・豪雨災害予測,風速・降水量の理解と災害への意識などについて行った.被害が発生する降水量や風速に対しての見積もりの甘さ,台風襲来まで余裕のある時点での予報図の正しい理解の低さ,賃貸居住者と持ち家居住者の違いや地域の違いによる災害に対する意識・備蓄の考え方の差異が認められた.この分析から,不確実性を有する災害情報に対して人がどのように判断し,行動するのかのリスク認知に関わる傾向を得ることができ,今後,これらをゲーム要素として反映させる予定である.

 以上,リスクコミュニケーションを促進させ,災害情報の不確実性などを含むVDRゲームが構築でき,これを防災人材育成事業で,活用を図る予定であったが,新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり,2020年度内での試行実施までには至らなかった.しかし,本研究とこれまでの取り組みをふまえて申請した科学技術振興機構(JST)のSOLVE for SDGs「ソリューション創出型」に,研究開発プロジェクト名「コミュニティ防災人材育成システムの全国展開に向けた実証プロジェクト」で採択され,2020年10月30日~2023年9月30日の間で,本研究成果を教育コンテンツに含めて,地域での実践と効果評価・改善を行いながら全国展開ができるパッケージ化を目指す予定である.

第三者評価

リスク・コミュニケーションをリモートで,というニーズも高まる中,Web上でのVDRゲーム研究開発の意義は大きい.また研究メンバーのこれまでの研究キャリアを活かしながら,気象ハザードシナリオ,リスク認識と行動変容に関する調査を実施し,VDR開発につなげている点は高く評価できる.またサイエンスカフェ,都市防災研究シンポジウムなどを通した成果公表と地域貢献活動も意義が大きいと判断される.