交換留学レポート11月号(ドイツ ハンブルク大学)
文学研究科後期博士課程 木戸紗織
ラプスカウス
10月と言えば秋、秋と言えば食欲の秋ということで、今回はハンブルクの食についてお話ししたいと思います。フレンチやイタリアンなどと比べると、ドイツ料理はいまいちピンとこないかもしれません。しかし、ドイツも日本と同じようにかつて小さな国家に分かれていたことから、地方ごとに特色のある食文化が見られます。その中から、ハンブルク名物と私が見つけた秋の味覚をご紹介しましょう。
まずは、ハンブルクの名物ラプスカウスLabskaus。写真は、生まれも育ちもハンブルクという友達が、家に伝わる独自のレシピに沿って作ってくれたものです。家庭ごとに異なるので一概には言えませんが、私がごちそうになったご家庭では、コーンビーフと潰したジャガイモを混ぜ合わせ、そこへ細かく切った赤カブの一種とピクルスを加えます。仕上げに目玉焼きをのせれば出来上がり。目玉の数はお好みで。お店などでは、ニシンや生の牛肉を使う場合もあるようです。ピクルスの酸味がきいて、さっぱりとした料理です。
フェーダーヴァイサー
続いては秋の味覚。秋と言えば、ブドウの収穫時期ですね。ヨーロッパには、この時期しか味わうことのできない季節限定のワインがあります。これは、収穫したブドウを絞って瓶詰めしたばかりのもので、地方によって名前は様々ですが、ハンブルクでよく見かけるのは白ワインになる手前のフェーダーヴァイサーFederweißerです。発酵中のため常に炭酸が出ていて、ふたをすることができません。そのため、瓶には「瓶を倒さないで!」と書かれたふたがそっと被せてあるだけです。また、発酵が進むにつれてどんどん味が変わり本物のワインに近づいていきます。こういった理由から長距離輸送・長期保存が困難なため、まさにこの時期、現地でしか味わえない貴重な旬の味覚なのです。肝心の味はというと、ワインになる手前というだけあってアルコール度が低く、濃厚だけどさっぱりした炭酸入りブドウジュースといったところでしょうか。もしこの時期ドイツやヨーロッパへ旅行することがあれば、一度探してみてください。スーパーや、場合によっては街中のスタンドでコップ一杯から売っていることもあります。
秋は狩猟の季節でもあります。日本でもジビエという言葉を聞きますが、ヨーロッパで秋に狩猟が解禁される背景には、冬に備えて動物が栄養を蓄え肉質がよくなること、また子育てが済む時期であることから親の警戒心が和らいで危険が少なく、かつ動物の数に影響を与えない等の理由があるようです。ここハンブルクでも郊外に狩猟可能な場所があり、学生の中には父親が狩った動物を食べるのが家族の恒例行事だという人もいました。
店頭の柿
一方、一般のスーパーにもこの時期だけウサギが出回ります。丸々売られているのを見ると少々複雑な気がしますが、誰に聞いても非常に美味しいという評判を聞きます。近々、友人が家族でウサギ料理を食べるとき招待してくれるそうで、今からとても楽しみです。
最後は柿について。なんだ、柿だったら日本でも買えるじゃないかとお思いでしょうが、なんとドイツでもKAKIという名前で売られているとしたら、びっくりしませんか?残念ながらまだドイツ語の辞書には収録されていないようですが、市井ではすでにdie Kakiとして人々の生活に溶け込んでいます。もうコートを着てすっかり冬支度のハンブルクですが、店先であの四角いオレンジ色の果物を見かけると、晴れ間の多い日本の秋を思い出します。